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Webアクセシビリティ達成基準「1.2.4 キャプション(ライブ)の達成基準」の話

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2025/08/01 | T.Y.

こんにちは、道洋行東京支店Web制作スタッフのT.Y.です。

前回はWebアクセシビリティ達成基準「1.2.3 音声解説、またはメディアに対する代替(収録済)」について解説しました。続けて今回は「1.2.4 キャプション(ライブ)の達成基準」への対応について解説します。

キャプションと言えば、「1.2.2 キャプション(収録済み)」で記事にしました。
「1.2.2 キャプション(収録済み)」は、あらかじめ録画された音声コンテンツに対して、同期したキャプション(字幕)を提供することを求める達成基準でした。それに対して「1.2.4 キャプション(ライブ)」は、ライブ配信などリアルタイムの音声コンテンツに対して、できる限りリアルタイムでキャプションを提供することを求める達成基準です。

つまり、収録済みかライブかで適用される基準が異なります。

1.2.4 キャプション(ライブ)とは?

レベルAAに属するリアルタイム字幕の要件

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)2.0/2.1における「1.2.4 キャプション(ライブ)」は、レベルAAの達成基準であり、ライブ音声コンテンツにリアルタイムで字幕を付けることを求めています。

従来のオンデマンド動画とは異なり、「リアルタイムで進む音声」への対応がポイントです。ライブセミナー、オンライン会議、SNS配信などが対象となり、誰もがリアルタイムで参加できる環境整備が求められています。

なぜライブの字幕対応が重要なのか?

聴覚に障害のある方へのリアルタイムアクセス

ライブ配信では、聴覚障害や難聴を持つ方がリアルタイムで内容を把握できることが不可欠です。テキスト資料やスライドだけでは伝わりにくい場面もあるため、字幕があることで参加しやすさがぐんと向上します。

騒音下や無音環境でも内容を逃さない

移動中や公共の場、音が出せない環境では音声が聞き取りづらくなりますが、字幕があれば安心。情報格差を生まない配信として、視聴体験全体の質が高まります。

信頼性と社会的責任のアピール

行政機関など公的な情報発信では、「誰も排除しない情報提供」が求められます。ライブ配信で字幕を提供する姿勢は、包括性を示す明確なメッセージとなります。

実際にどうやって実装する?ライブ字幕の方法

自動字幕(ASR)ツールの活用

最近では、自動音声認識(ASR)によるリアルタイム字幕が広く使えるようになっています。

  • YouTube Live:自動字幕機能で配信可能
  • Zoomのライブキャプション(プロ・Businessプラン)
  • Microsoft Teamsのライブ字幕
  • OBS Studio+Google Speech API連携による字幕表示

これらのツールを使えば、特別な開発なしで字幕表示が実現できます。

自動字幕の注意点と改善策

ただ、自動字幕には以下のような課題もあります。

  • 専門用語・固有名詞の誤認識
  • 話者ごとの区別が不明瞭になる場合
  • 字幕表示のラグ(ずれ)が起きやすい

そのため、可能であれば用語辞書の追加、モデレータによる手動チェックなどを組み合わせると、より正確になります。

文字起こし支援サービスの活用も選択肢

重要なライブ配信では、プロの文字起こしオペレーターによるリアルタイム字幕提供も考えられます。

  • 専門用語への対応がスムーズ
  • 内容の精度・正確性を担保
  • 費用は1分あたり数百円〜数千円程度(内容による)

信頼性と品質を重視する場合、こうしたサービスの導入が安心です。

運用時によくある悩みと対応策

「字幕の遅延ラグが気になる…」にどう対応する?

自動字幕ではタイムラグがつきものですが、配信後にアーカイブ動画に修正版字幕(SRT)を再付与することでずれを解消できます。

「人手が足りない…」という悩みに

小規模のライブ配信では人員が限られがちですが、次のような工夫が有効です。

  • 台本や話す内容を事前に共有して精度を上げる
  • 自動字幕+1名チェック役で十分対応可能
  • 予算があれば外部業者を活用し、手間を大幅に削減

チェックリスト:ライブ配信前の字幕対応準備

以下の項目を事前に確認しておくと、当日のトラブルをぐっと減らせます:

  1. 配信ツールで 字幕機能が有効化されているか
  2. 用語辞書を事前に登録(ZoomやOBSなどに対応)
  3. チェック役のモデレーターを配置
  4. ラグ対策ルール話す速度をややゆっくりに)
  5. アーカイブ用に修正版SRT(映像や音声を転送するためのプロトコル)ファイルを準備

まとめ:1.2.4 に対応する意義とは?

  • 「1.2.4 キャプション(ライブ)」は、ライブ配信にリアルタイム字幕提供を義務化するレベルAAの基準
  • 音声だけでは届かない情報を、リアルタイムで視覚化して誰でも理解できる配信が可能
  • 自動字幕+運用+外部支援の組み合わせで、正確で使いやすい字幕運用環境を構築できる
  • 「安心・信頼・使いやすさ」を届けたい中小企業・行政にとって価値ある取り組み

ライブ配信やオンライン会議が増える現代において、「話す情報をリアルタイムで届ける」ためのアクセシビリティは欠かせません。ライブイベントでの字幕対応は安心・信頼を与える重要ポイントです。

当社サービスに関するご相談・お見積もりなど、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆者
T.Y.

2011年に道洋行東京支店へ入社。Webチームに所属し、デザイナーとして多くのWebサイト制作に携わる。ユーザー視点を重視したデザインと、アクセシビリティに配慮したサイト設計を強みとし、企業や行政機関向けのプロジェクトを多数手掛ける。
最新のデザイン動向やUI/UXに関する知見を活かし、ユーザーに価値のある情報を提供。Web制作のご相談やお問い合わせは、お気軽にどうぞ。