こんにちは、道洋行東京支店Web制作スタッフのT.Y.です。
前回はWebアクセシビリティ達成基準「1.2.1 音声だけ及び映像だけ」について解説しました。
続けて今回は「1.2.2 キャプション(収録済み)」への対応について解説します。
近年、Webサイトに動画を使うケースが増えてきました。
製品紹介、会社案内、採用動画、行政サービスの説明など、視覚的に訴求できる動画はとても効果的です。
しかし、音声だけに頼った動画は、聴覚に障害がある方や、音声を出せない環境で閲覧している方にとって、大きな壁となってしまいます。
そこで重要になるのが、キャプション(字幕)の存在です。
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)における達成基準1.2.2「キャプション(収録済み)」は、こうした問題を解決するための指針のひとつです。
もくじ
1.2.2 キャプション(収録済み)は、収録済みの音声コンテンツに対して、字幕(キャプション)を提供することを求めています。
対象は主に、事前に録画・収録された動画コンテンツで、リアルタイムのライブ配信などは含まれません(リアルタイムは1.2.4に該当します)。
キャプションは単にセリフを書き出すだけではなく、たとえば以下のような音声情報も含む必要があります。
つまり、「耳で聞こえる情報」を文字にして可視化することが、この達成基準の目的です。
日本でも、障害者差別解消法が改正され、2024年4月から事業者の「合理的配慮の提供」が義務化されました。
この中にはWebサイトのアクセシビリティも含まれます。
とくに、公共機関や自治体、医療・教育関連の団体、そしてBtoBで行政と関わる企業は、アクセシビリティへの対応が強く求められています。
「動画に字幕をつけるだけ」と思うかもしれませんが、それが誰かの情報アクセスを保証する行動になります。
キャプションは障害者支援だけでなく、以下のような状況でも役立ちます。
つまり、字幕はすべての人に優しい設計なのです。
Web上での動画キャプションには、いくつかの実装方法があります。代表的なのは以下の形式です。
動画編集ソフトで字幕を直接入れておく方法です。
YouTubeやSNS投稿動画に多く見られる形式で、再生時に字幕のオン・オフはできません。
.vtt
などの字幕ファイルをHTMLで読み込ませ、ブラウザで表示・非表示を切り替えられる形式です。
<video controls>
<source src="movie.mp4" type="video/mp4">
<track src="caption.vtt" kind="captions" srclang="ja" label="日本語">
</video>
この方法であれば、視聴者が自由に字幕の表示を切り替えられます。
どちらも達成基準としてはOKですが、アクセシビリティの観点からは「クローズドキャプション(字幕ファイル方式)」が望ましいとされています。
なぜなら、ユーザーが自由にON/OFFを選べることが、真の「ユニバーサルデザイン」だからです。
たとえば、以下のような字幕はNGの例です。
字幕は「聴こえる情報すべて」を網羅する必要があります。
YouTubeなどでは自動字幕生成の機能がありますが、正確性に課題があります。
そのため、たとえ自動生成機能を使ったとしても、必ず人間の目でチェックし、修正するプロセスが不可欠です。
字幕ファイルや動画の書き起こしをページ内に埋め込むことで、テキスト情報が増え、検索エンジンに内容が伝わりやすくなります。
特に動画内で重要なキーワードを含んでいれば、Googleに対するSEO的な効果も期待できます。
「アクセシビリティ対応している企業」は、公共性・信頼性が高いと見なされやすくなります。
補助金や公共案件の入札でも有利になるケースがあります。
また、企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの取り組みの一環としても、アピールできる要素です。
1.2.2キャプション(収録済み)は、動画を使った情報発信が当たり前になった今、すべての人に情報を届けるための重要な基準です。
字幕をつけることは、特別なことではありません。
ユーザー視点での配慮であり、企業や行政の信頼にも直結する「当たり前の対応」なのです。
「動画を使っているけれど字幕までは対応できていない」「自動生成だけで済ませてしまっている」という方は、ぜひ一度、見直してみてください。
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