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Webアクセシビリティ達成基準「1.2.2 キャプション(収録済み)」の話

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2025/07/01 | T.Y.

こんにちは、道洋行東京支店Web制作スタッフのT.Y.です。

前回はWebアクセシビリティ達成基準「1.2.1 音声だけ及び映像だけ」について解説しました。
続けて今回は「1.2.2 キャプション(収録済み)」への対応について解説します。

近年、Webサイトに動画を使うケースが増えてきました。
製品紹介、会社案内、採用動画、行政サービスの説明など、視覚的に訴求できる動画はとても効果的です。

しかし、音声だけに頼った動画は、聴覚に障害がある方や、音声を出せない環境で閲覧している方にとって、大きな壁となってしまいます。

そこで重要になるのが、キャプション(字幕)の存在です。
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)における達成基準1.2.2「キャプション(収録済み)」は、こうした問題を解決するための指針のひとつです。

WCAGで定められた1.2.2の概要

1.2.2 キャプション(収録済み)は、収録済みの音声コンテンツに対して、字幕(キャプション)を提供することを求めています。
対象は主に、事前に録画・収録された動画コンテンツで、リアルタイムのライブ配信などは含まれません(リアルタイムは1.2.4に該当します)。

キャプションは単にセリフを書き出すだけではなく、たとえば以下のような音声情報も含む必要があります。

  • ナレーションや話し手のセリフ
  • BGMや効果音(重要なもの)
  • 笑い声や拍手などの音の演出

つまり、「耳で聞こえる情報」を文字にして可視化することが、この達成基準の目的です。

なぜキャプション対応が重要なのか?

法的・社会的な背景

日本でも、障害者差別解消法が改正され、2024年4月から事業者の「合理的配慮の提供」が義務化されました。
この中にはWebサイトのアクセシビリティも含まれます。

とくに、公共機関や自治体、医療・教育関連の団体、そしてBtoBで行政と関わる企業は、アクセシビリティへの対応が強く求められています。

「動画に字幕をつけるだけ」と思うかもしれませんが、それが誰かの情報アクセスを保証する行動になります。

視聴環境の多様化

キャプションは障害者支援だけでなく、以下のような状況でも役立ちます。

  • 通勤電車の中など、音を出せない場所
  • オフィス内での静かな閲覧環境
  • 難聴の高齢者層への情報提供
  • 外国人の閲覧者にとっての読み取り補助(日本語音声 × 日本語字幕)

つまり、字幕はすべての人に優しい設計なのです。

キャプションの具体的な実装方法

キャプションの形式とは

Web上での動画キャプションには、いくつかの実装方法があります。代表的なのは以下の形式です。

1. 動画ファイルに直接焼き付ける(オープンキャプション)

動画編集ソフトで字幕を直接入れておく方法です。
YouTubeやSNS投稿動画に多く見られる形式で、再生時に字幕のオン・オフはできません。

2. 字幕ファイルを読み込ませる(クローズドキャプション)

.vttなどの字幕ファイルをHTMLで読み込ませ、ブラウザで表示・非表示を切り替えられる形式です。

<video controls>
  <source src="movie.mp4" type="video/mp4">
  <track src="caption.vtt" kind="captions" srclang="ja" label="日本語">
</video>

この方法であれば、視聴者が自由に字幕の表示を切り替えられます。

どちらを選ぶべきか?

どちらも達成基準としてはOKですが、アクセシビリティの観点からは「クローズドキャプション(字幕ファイル方式)」が望ましいとされています。
なぜなら、ユーザーが自由にON/OFFを選べることが、真の「ユニバーサルデザイン」だからです。

達成基準を満たす際の注意点

ただの文字起こしでは不十分

たとえば、以下のような字幕はNGの例です。

  • 音声と関係ない内容だけ表示
  • 会話の一部だけしか表示されていない
  • BGMや効果音など、重要な非言語音声の情報が欠けている

字幕は「聴こえる情報すべて」を網羅する必要があります。

自動生成字幕の落とし穴

YouTubeなどでは自動字幕生成の機能がありますが、正確性に課題があります。

  • 専門用語や固有名詞が誤変換される
  • 意味が通じない文章になる
  • ナレーションが早口だと字幕が追いつかない

そのため、たとえ自動生成機能を使ったとしても、必ず人間の目でチェックし、修正するプロセスが不可欠です。

1.2.2キャプション対応のメリット

SEOにも効果的

字幕ファイルや動画の書き起こしをページ内に埋め込むことで、テキスト情報が増え、検索エンジンに内容が伝わりやすくなります。
特に動画内で重要なキーワードを含んでいれば、Googleに対するSEO的な効果も期待できます。

企業の信頼感が上がる

「アクセシビリティ対応している企業」は、公共性・信頼性が高いと見なされやすくなります。
補助金や公共案件の入札でも有利になるケースがあります。

また、企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの取り組みの一環としても、アピールできる要素です。

キャプションは「誰も取り残さない」ための第一歩

1.2.2キャプション(収録済み)は、動画を使った情報発信が当たり前になった今、すべての人に情報を届けるための重要な基準です。
字幕をつけることは、特別なことではありません。
ユーザー視点での配慮であり、企業や行政の信頼にも直結する「当たり前の対応」なのです。

「動画を使っているけれど字幕までは対応できていない」「自動生成だけで済ませてしまっている」という方は、ぜひ一度、見直してみてください。

当社サービスに関するご相談・お見積もりなど、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆者
T.Y.

2011年に道洋行東京支店へ入社。Webチームに所属し、デザイナーとして多くのWebサイト制作に携わる。ユーザー視点を重視したデザインと、アクセシビリティに配慮したサイト設計を強みとし、企業や行政機関向けのプロジェクトを多数手掛ける。
最新のデザイン動向やUI/UXに関する知見を活かし、ユーザーに価値のある情報を提供。Web制作のご相談やお問い合わせは、お気軽にどうぞ。